ご褒美は唇にちょうだい
「どうやったらいいか……わからないの。どんな顔をしたらいいか、どんな風にしたらいいかわからないの」


「そんなの……」


自分で普段する時のことを思い出せばいい。そう言おうとして、はたと止まった。
操には友人がいない。友人すらいない彼女に、恋仲になるような相手はいないのだ。


「キスの経験がないんですね」


本人には認めづらいことだろうけれど、確認する。操は曖昧に頷き、それで十分わかった。
操には恋愛経験がないのだ。


「相手役の工藤くんにリードしてもらうのはどうですか?」


「リードしてもらって済むものなの?その時、私はどんな顔をすべきなの?どんな演技をすべきなのよ。駄目、全然見当がつかない」


演技は想像でもできる。
しかし、経験を演技に乗せた方が説得力が増すには違いない。

そもそもキスなんて、未経験の人間には意味不明の行為だろう。
互いの唇を探り合うことで快感を覚えるなんて、やってみなければわからない。

< 59 / 190 >

この作品をシェア

pagetop