ご褒美は唇にちょうだい
「お姉ちゃんの事務所の社長、恋愛とかそういうところ厳しくないでしょ?」


厳しくはないかもしれないけれど、だからってほいほい恋愛に走れない身の上でもある。


「あ、違うか。真木さんか」


突如、久さんの名前が出て、私は動揺した。
私の気持ちに環は気付いているのだろうか。

目を見開く私を不思議そうに眺めて環が言う。


「え?そうでしょ、恋愛スキャンダルとかに厳しいのは、社長じゃなくて真木さんの方だよね」


「……あー、……うん、そうだね」


よかった、勘違いしたのは私だ。
環は私の気持ちを揶揄したわけじゃない。


「真木さんってさ、完璧超人だよね。しれーっとなんでもできちゃうタイプ。お姉ちゃんをここまで国民的女優に押し上げたのってあの人の営業力もあるよね」


「うん、私もそう思う」


私個人は役者でしかない。彼が私を守り、支えてくれなければ、私は今の場所にいない。


「あの人って、結婚してないよね。いくつだっけ?」


「えっと、九つ上だから32歳になるはず」
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