ご褒美は唇にちょうだい
「彼女くらいはいるのかな」


どうだろう。そんなことは私の方が知りたい。

久さんに恋人がいるのか。
それは私も知っている人なのか。
それとも、恋愛なんかは不要と思っているタイプなのか。

どちらにしろ、私には聞くきっかけも、理由もないのだ。

環があははと陽気に笑う。


「でも、真木さんさ、お姉ちゃんのことを実の娘レベルで世話焼いてるじゃん。それで満足しちゃいそうだよね」


「なにそれ」


「母性っていうか?世話焼きたい欲求が満たされたら、彼女できないかもね」


景気よく笑う環に、そんな簡単なことならぜひそうなってほしいものだという本音を言えない私。

いいの、少しこじらせてても。

環の言う通り、私にかかずらうことで久さんの興味が私にだけ向いていてくれたら、こんなに幸せなことってない。

その時、ドアのインターホンが鳴った。
一階の玄関ホールからの呼び出しではない。ドアの外にすでに人が来ている。
こんなことをできる人間は限られている。
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