ご褒美は唇にちょうだい
「はい」


インターホンに出る。カメラには久さんの顔が映し出されていた。


『操さん、突然すみません。渡したいものがあります』


久さんだ。
ちょうど、久さんのことを考えているときに来てくれるなんて。

いそいそと鍵を開けると、そこには背の高い久さんの姿。
夜なのに、スーツはまったく着崩れしていない。髪も一筋だって乱れていない。


「久さん」


「……来客ですか?」


私のものより見るからにサイズが小さく華奢なパンプスに久さんが反応した。


「真木さん、こんばんはー。先日はご馳走様でしたー」


リビングから環が顔を出す。
久さんが優しく微笑んだ。営業用の微笑だ。
私には向けられない種類の笑顔なので、こうして目にすると無条件にドキドキしてしまう。


「環さんでしたか。ケーキはお口に合いましたか?」


「ばっちりですよー。お店の名前覚えたから、今度買ってきなさいって母に言われてます」


「それはよかった」


微笑んだまま、久さんが私に顔を向ける。
だから、その笑顔やめてってば。
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