ご褒美は唇にちょうだい
「それでは」


久さんがドアに手をかける。

ああ、久さんが行っちゃう。
ねえ、せめて頭くらいは撫でていって。

気付いてるんでしょう?
私が寂しそうな顔をしてるって。

気付いていて、敢えて無視してるんでしょう。

いいよ、わかってるよ。受け入れてもらえないのは。

それならせめて、優しくして。仕事の範囲内で私を優遇して。


「出張、気を付けて」


「ええ、操さんも無理なく」


久さんは私に指一本触れることなく、去って行った。



< 82 / 190 >

この作品をシェア

pagetop