ご褒美は唇にちょうだい






その夜の帰宅は22時半。
部屋に着くと、私は電気をつけ、まず冷蔵庫のペリエを出してきた。


「飲む?」


グラスを掲げて見せると久さんは頷いた。


「いただきます。操さん、お腹は空いていませんか?」


「大丈夫……撮影の合間に少し食べたから」


嘘だけど。こんなに緊張していて、お腹に何も入るわけがない。

ガス入りのペリエをごくんと嚥下するのも、苦しいほど。

久さんにグラスを手渡すと、ペリエをしまうため、キッチンに戻った。
キッチンカウンターを挟んで、久さんと見つめ合う。

いつまでも引き止めておくわけにもいかない。明日も仕事だ。
私はグラスを流しにことんと置く。


「シャワー浴びてくる」


言いながら、緊張で死にそう。
寝室で衣類をかき集めバスルームへ向かった。
< 89 / 190 >

この作品をシェア

pagetop