ご褒美は唇にちょうだい
肌が弱いのでオーガニックなボディソープを使っているけれど、今日ほどもっといい香りのものを買っておけばよかったと思ったことはない。
髪を洗うシャンプーもコンディショナーも香料ゼロだ。

久さんが抱きしめた時、ふわっと良い香りがするならいいのに。
妙なことばかり気になるもので、シャワーを手早く浴びると、棚をひっくり返してもらいもののボディミストを取り出してくる。

ほんの少しなら、かぶれたりしないでしょ。
手首と首筋にしゅっと噴きかけ、馴染ませる。

そんなことをしながら、浮かれている自分が恥ずかしくなる。

これは演技の練習だ。模擬演習だ。
だから、こんなことをしているのは努力の方向性が違う。

もしかして、少しパニックを起こしているのかも。

ルームウェアのワンピースにショートパンツのスタイルでシャワーを出ると、ソファでタブレットを見ていた久さんが顔を上げた。


「すみません。このメールを返したら、俺もシャワーを借ります。もう少し待っていてもらえますか?」

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