ご褒美は唇にちょうだい
「うん、大丈夫」


そうか、こんな時でも久さんは仕事を片付けていてくれる。
いや、私との時間も彼にとっては仕事なのだ。

胸がぐつんと痛い。
いい、わかっていて依頼している。

何気ない風を装って、寝室へ向かう。ベッド周りを点検し、ゴミや髪の毛を掃除する。
シーツを変えたらわざとらしいけど、せめてしわを伸ばしておこう。

間もなく、シャワーの水音が聞こえだした。
私はベッドに転がり、深呼吸。
少しでも落ち着いておかなければ。


しかし、深呼吸が眠気を呼んだらしく、次に覚醒した時には、目の前に久さんの顔があった。


「久さん……私……」


寝てしまっていたのだ。
今は何時?
随分待たせていたらどうしよう。

慌てて身体を起こし、時間を確認しようとスマホを探す。
しかし、その手を押しとどめられた。


「操、そのままでいい」


あ、始まる。

そう思った。

< 91 / 190 >

この作品をシェア

pagetop