ご褒美は唇にちょうだい
次の瞬間、久さんが腕を引き、私はベッドに背中から再着地した。

目の前には覆いかぶさる格好の久さん。
まつげ長い。
虹彩の色が綺麗。

名前を呼ぼうと思った。
しかし、果たせなかった。

塞がれた唇は、こじ開けられ、熱い舌が侵入してくる。
久さんの長い指が、私の顎を捉え、キスの角度を深くする。

大きな手が私の背を長いストロークで撫で上げた。
触れ方が違うのはすぐにわかった。

普段、キスしてくれる時、髪を撫でたりソファに押し付けられたりということはあった。でもこれは違う。

ああ、久さんは女性にこうやって触れるんだ。
そのことがわかった瞬間、強烈な欲と嫉妬が湧いてきた。


そして、正反対の反応が起こった。身体が強張って動かない。

ここでやめてしまいたい。
おしまいにしたい。

もちろん、久さんは私と最後までするつもりなんかない。
私が演技に役立てられるよう、雰囲気を感じさせようとしているだけ。

そんな納得づくのこの時間を全力で拒否したい自分がいた。
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