ご褒美は唇にちょうだい
一方で、誰かが頭の中で言う。
これは仕事のため。

いいじゃない。抱く真似事でも触れてもらえるわよ。
愛してる風にしてもらえるわよ。

ほら、業務だって唱えてみて。
この一瞬を受け入れたくなるから。

結果として、私はこの時間を取った。
心に虚しくも覚悟が決まる。すると強張った身体は、彼へ感じる欲望に徐々に緩んでいくのだ。

久さんは甘い唇を一度離し、私の耳朶に舌を這わせてきた。

感触に震えが走った。
嫌悪ではない何かを感じる。

それはキスのたびに感じていた、身体の芯がうずくような感覚だった。


「操」


吐息とともに名前を呼ばれると、全身の力がこぼれ流れて、消えてしまいそうになる。

ルームウェアのワンピースは前にボタンがついている。
そのボタンがひとつずつ外される時も、私は固まったまま久さんの手元をじっと見つめていた。
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