ご褒美は唇にちょうだい
「操は全部綺麗だ。恥ずかしがらなくていい」


馬鹿言わないで。恥ずかしくて、頭がおかしくなりそう。

私は必死に身体を起こし、久さんの行為を妨害しようともがく。
手で肩を押すけれど、脚を引き抜こうとするけれど、できない。
駄目だ、力では全く敵わない。

つま先から脛、ひざ。右脚を先から順に蹂躙され、私は息を呑んだ。

馬鹿な女。
私、単純に喜んでいる。

どうせ叶わない恋。そんなこととっくに知っていて、私の頭に残っているのは本当にささやかで野蛮で、原初の欲求だけなのだ。

触りたい。キスしたい。

ずっとこうしていたい。

本当に情けないことに、この夜の目的はそれだけだと気付いてしまった。

仕事だと言い訳して、結局それですか。

自分を嘲りたいのと同時に、この幸福な一瞬に溺れたい。


「久さん、こっちきて」


私が震える声でねだると、久さんはようやく私の脚を解放してくれた。
のしかかるように抱きしめられ、幸福で胸がいっぱいになる。

ああ、束の間でいい。久さんは今、私だけのものだ。
彼の香りも、彼の温度も今は私のために存在している。
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