ご褒美は唇にちょうだい
脚を彼のスラックスの脚にからめた。
シャツの前を暴き、首筋にキスをすると、久さんがわずかに身体を揺らした。

しかし、久さんは行為を止めない。唇が、頬や額に降る。
指先はまるで本当の恋人のように私の髪をすき、胸が苦しくなるくらいの愛しさを感じた。

私は腕を伸ばし、久さんの髪を撫でた。
もっと触ってほしいし、触りたい。

久さんの表情が普段よりずっと余裕もなく、頬も上気していて艶っぽい。
ねえ、久さん、それも演技?

ふと、気付いた。
男性という性をまったく知らないわけではない。最低限の情報として、……たぶんの話になるけれど……久さんはもしかすると欲を覚えてくれているかもしれない。
密着していれば、否が応にもわかる。身体上の変化は、経験なしの私にもわかった。

久さんは男性だ。
男性は気持ちなどなくても、性的に刺激されれば反応する。そういうものなのはわかる。

だけど……。

私の頭には、欲求がある。
久さんにもっと触れたい。叶わなくてもいい。

この一瞬、愛し合ったふりをしたい。
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