ご褒美は唇にちょうだい
久さんはあくまで年長者の言葉で告げた。
おまえを抱くことはない。そういう意味の答え。
それでも承服できない私がいて、勝手に涙がせりあがってきた。
唇を噛みしめ、耐えてから言い返す。
「軽い気持ちじゃない。久さんならいい」
「初めては、本当に好きな相手にあげるべきです」
だから。それがあなたなのよ。
言わないけど、絶対に口にしないけど。
「操さん」
久さんは私のルームウェアの前を合わせた。自分ではずしたボタンを綺麗にはめ直していく。
「あなたは大事な人です。俺の守るべきたったひとつの才能です」
恨みがましく見つめる私に、久さんは誠実な瞳で見つめてくる。
なんてずるいやり口だろう。
「女優・鳥飼操に心酔しているんです。一時の欲望で手出しなんかできない」
私は息を吸い込む。短く嘆息したのは、それでも女優の意地だ。
興ざめというように首を振ると、私は久さんを押しのけベッドから立ち上がった。
「冗談よ。……もう十分参考になった。帰って」
おまえを抱くことはない。そういう意味の答え。
それでも承服できない私がいて、勝手に涙がせりあがってきた。
唇を噛みしめ、耐えてから言い返す。
「軽い気持ちじゃない。久さんならいい」
「初めては、本当に好きな相手にあげるべきです」
だから。それがあなたなのよ。
言わないけど、絶対に口にしないけど。
「操さん」
久さんは私のルームウェアの前を合わせた。自分ではずしたボタンを綺麗にはめ直していく。
「あなたは大事な人です。俺の守るべきたったひとつの才能です」
恨みがましく見つめる私に、久さんは誠実な瞳で見つめてくる。
なんてずるいやり口だろう。
「女優・鳥飼操に心酔しているんです。一時の欲望で手出しなんかできない」
私は息を吸い込む。短く嘆息したのは、それでも女優の意地だ。
興ざめというように首を振ると、私は久さんを押しのけベッドから立ち上がった。
「冗談よ。……もう十分参考になった。帰って」