抜き差しならない社長の事情 【完】
「ちょっと、曄ちゃん あれどういうこと?
なんか最近よく見かけるのよねーあの二人」
総務の保科女史が、眉間をひそめて曄の腕を引いた。
振り返った曄と保科女史の視線の先では、
優しい微笑を浮かべて夢野紫月を見下ろしている背の高い切野社長と
はにかんだように微笑みながら紙袋を見ている夢野紫月がいる。
「どうって、見た通りですよぉ クスッ」
「え?! 曄ちゃんは?」
「私は、あっち」
曄が指さす方を見上げると、
吹き抜けの空間の上の階から、神田専務が軽く手をあげているのが見えた。
「えええ!! そうなの? そうだったの?」
クスクス
「ええ、そうなんです」