抜き差しならない社長の事情 【完】
「信じられないっ!
いるってわかってたら歌わなかったのにぃ」
真っ赤になって怒るやら照れるやらの紫月を見ながら、
クックック と、ひとしきり笑った蒼太は、
笑いつかれたように はぁ、とため息をついて
ワインで喉を潤すと
「あの時、思った――」
テーブルの上で拳を作っている紫月の右手を包み込むように、
左手を重ねた。
「あの場にいる男全員
見るなと言って、殴り倒してやりたかった」
「! ……」
「創立記念パーティで紫月に絡んだあの男、
あの男の会社とは、即日取引を停止したよ」
「……」