抜き差しならない社長の事情 【完】
「付き合ってないよ。
相原さんに聞いたら『あいつは妹みたいなもんだ』ってケラケラ笑っていたし、さっきだって俺が声をかけたら『よかったな』って。
夢野さんに聞いても『兄で師匠です』って言いきっていたし、別に二人とも独身なんだから付き合っても隠す必要ないだろう?
それに彼女、部屋は友達とシェアしてるんだな、さっきちょうどその子が帰って来たところで挨拶したよ。
俺、夢野さん誘ってみようかなぁ、いいよなぁ~彼女、恋人いるのかなぁ」
しばらく黙って聞いていた切野蒼太は
ムッとしたまま、
「社内恋愛は禁止だ! 風紀が乱れる。
もし彼女が相原さんと付き合っているとわかったら、すぐに辞めてもらうからな」
切り捨てるようにそう言ったあと、
「――彼女のマンションはどんなだった? 見たんだろ?」
と聞いた。
「ん? 夢野さんの?」
「ああ」
「西日しか当たらないっていうか、まぁ、古びたマンションだったよ」
「ふーん……」