抜き差しならない社長の事情 【完】
―― 最低! ほんとに 最低!!
飛び込むように乗ったバスの座席で
俯むいた紫月は、
バッグの中からマスクを取り出して、
誰にもわからないように涙を流した。
わかっている……
最低なのは自分だと。
関係のない曄のことまで悪し様に言ってしまった時点で
自分は大切な何かを失い、
何かに負けたのだ。
せっかくがんばったのに。
ここまでがんばったのにもう無理……。
蒼太と同じ会社で働くなど到底無理な選択だったのだ。
『紫月、意地張ってもいいことないよ?』
今更のように亜沙美が言った言葉が思い出された……。
つまらない意地を張っているために傷つけて傷ついて……
私―― ただの嫌な女だ……