海月物語。

~別々の生活

 海斗は、家に帰る。以前までの一人暮らしに戻っただけなのに、心に穴が開いたような錯覚を覚え寂しかった。
「ただいま。」
シーンとした我が家。暗いリビングに明かりをつければ、来海が‥‥と期待したが、いない。海斗はソファに座り、天井をみた。スマホをいじってみる。来海という名前のリストはない。
「来海、スマホ持ってるのかな‥‥。」
しばらくして、お風呂に入ろうと、着替えを用意しようとした。
「あれ~。俺のパンツ、来海どこしまったんだ~?‥‥‥‥あっ、あった。」
海斗の衣装ケースの中は、綺麗に整頓され、どこになにがあるのかわからなくなっていた。それだけ来海は、海斗に尽くしていたのだった。
 海斗は風呂から上がる。
「あれ‥‥きつくなったな。太ったか‥‥‥‥え!?!?!?」
海斗は、膝くらいまでしか上がらないパンツを見た。それは、海斗が持っているパンツと似た柄のTバックだった。
「え。来海ってこういうの履くの?」
海斗は、来海がこのTバックを履いた姿を想像した。
«ツーッッ»
「おっ、いかんいかん。」
海斗の鼻からは、血が流れた。海斗の寂しさは増すばかりだった。
< 45 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop