冷酷上司の甘いささやき
会社の飲み会ではそこまでオシャレしても仕方ないかなって感じで、いつもブラウスにチノパンみたいなラフな格好が多いけど、今日は違う。
ピンクの薄手のカットソーに、ギンガムチェックの膝丈スカート。足元は、今日はどのくらい歩くかわからなかったからヒールがあるものはやめたけど、最近買ったばかりでお気に入りの黒のバブーシュ。
まあ、自分で言うのもなんだけど、いわゆる”女の子”って感じのオシャレだと思う。

……一応、デートだし。初デートだし。
恋人にしては距離がある私たちだけど、せっかくの初デートに適当な恰好で来るのはなんか違うなって思ったし。……それに、なんかオシャレしたいなって思ってしまったんだよね。


でも、『いつもよりオシャレ』って言われると、明らかにこのデートのためにオシャレしてきたことを指摘されたみたいで、なんだか恥ずかしくなる。普通の恋人同士なら素直に喜べばいいのかもしれないけど、私たちは、”距離のある恋人”だから。距離があるのに私だけオシャレしてるのを指摘されたら、恥ずかしくなる。


だけど、課長はすぐに訂正した。

「ごめん、言い方間違えた」

「え?」

「いつもよりかわいい」

「……!」

びっくりした。そして、ドキッとした。
そりゃあ、『かわいい』って少しでも思ってもらえたらいいな、とは思っていたけど、課長の性格的にそれを口に出して言われるとは思ってなかったから……。ただのお世辞かもしれないけど……。
< 56 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop