冷酷上司の甘いささやき
「この辺りに住んでる人いないはずだけど……。でも、有名な公園だしな。悪い、デートすんならもっと場所考えた方がよかったな」

「い、いえ! 課長が謝ることでは!」

阿部さんは、私たちには気づくことなく、数メートル先の自動販売機の前で、いっしょに来ている友だちと思われる人たちと立ち止まって楽しそうに話をしていた。
阿部さんのほかには女の子がふたり、男の子が三人いた。みんな、阿部さんと同い年くらいの人たちだった。



「で、でも阿部さん、昨日は体調不良でお休みしたのにあんなに元気そう……っていうか、実際は私のことが嫌で休んだわけだから、やっぱり体調不良ではなかったのか……」


でも、落ち込みすぎて部屋から出られないような状況……ってわけではなさそうで、少し安心した。楽しそうに笑ってるし、缶ビール飲んでるし、元気だよね……。



そんなことを考えながら阿部さんの方を見ていると、阿部さんの会話が聞こえてくる。


「でさーっ、指導係の先輩がほんと最悪なの! 私なにもしてないのに殴ってきたの! ありえなくない!?」

「えーっ、グーで!?」

「グー! グー!」

「えーっ! 最低じゃんその人! その先輩、女? 男?」

「女! もうすぐ三十路のおばさん!」

「それってさぁ、うちらの若さに嫉妬してんだよー」

「だよねー。どうせ独身なんでしょ、その人」

「たぶんね。男の気配はないよ」

「それで奈々香に八つ当たりしてきたんだよ。それにしても、なにもしてないのに殴ってくるとかほんとないわ。そんなんで結婚できるとか思ってんのかよ」
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