冷酷上司の甘いささやき
眠くならないんだからお風呂に入ろうかとも思ったけど、もうなにもかもめんどくさい。まあ、いつも通り明日の朝シャワー浴びればそれでいいと思うし。



……課長のことを気にして、こんな気持ちになるくらいなら、私は今まで通りひとりの生活を楽しんで、恋なんてしなければよかったのかもしれない。




……恋。


……そうか。私、恋したんだ。

なんて、すごい今さら。こんなに課長への気持ち大きくしといて。



今まで、あんまり誰かのことちゃんと好きになったことなかったから、不思議な感覚。
でも、そうか。これが恋。恋って……こんなに苦しいものだったんだ。




それに気づいてから、どのくらいベッドの上でモヤモヤしていたのだろうか。
一向に眠くはならないし、でもこのままこうしていても心が苦しくなるばかりだ。
そろそろ体だけでも起こそうか――そう思った時。



――ピンポーン。


誰かが、部屋のチャイムを鳴らした。




こんな時間に誰? とも思ったけど、心当たりがあるとすれば、それはひとりしかいなかった。


私は慌ててベッドから降り、玄関へと走った。


そして、勢いよく玄関の戸を開けると。



「うわっ、びっくりした」

「課長……」

「ごめん、寝てた? ていうか、そんな勢いよく玄関開けるなよ。変質者だったらどうすんだよ。今度からは扉を開ける前に誰が来たのかをドア越しに確認して――戸田さん?」

私は、目の前の課長に、思わず抱きついていた。
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