冷酷上司の甘いささやき
「じゃあ、もう阿部さんと必要以上にふたりでいっしょにいることはないんですか?」

「ないよ」

「で、でも、じゃあなんで、私がさっき『泊まっていってほしい』って言った時、断ったんですか……」

「え? 断ったつもりないけど」

「断ったじゃないですか! 二次会あるからごめんって!」

「いや、『一次会終わったらいっしょに家まで行こう』って言ってくれたから、『二次会あるからいっしょには行けない。二次会抜けたらおじゃまするから』っていう意味だったんだけど」

「え、わ、わからないですよ、そんな言い方じゃ……」


だけど、安心した。課長は阿部さんのことをそういうふうに思っていたわけではなくて、私も、課長からどうでもいいって思われてたわけじゃないんだ。

だけど、安心はしたけど、なんて言ったらいいかわからなくて。
私はただ、私を抱きしめてくれている課長の両腕に、そっと自分の両手を重ねた


すると、課長はよりいっそう、ぎゅっと力をこめて、私のことを抱きしめてくれた……。


少しの間そうしたあと、課長は自然と、私の体を課長の方へと向き直してくれた。


そして――……



課長の唇が自然と近づき、私も、自然と瞳を閉じた。



課長の唇と私の唇が重なる。


最初に交わしたその唇はすぐにゆっくりと離れた。
そっと目を開けると、至近距離で目が合う。
そしてまた、どちらからともなく、唇を重ねる。

何度も、何度もキスをした。


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