mariage~酒と肴、それから恋~《2》
また、“あのとき”の声が頭の中に蘇って、トクンと心音が鳴る。


何、意識してんのあたし!!!

頭を振って、記憶を吹き飛ばそうとした。


仕事仕事!

と思えば思うほど、あたしの神経は左側に集中する。


薄暗いフロアに二人きり。


だって、このシチュエーション、“あのとき”と同じなんだもん。


*・゚*゚・*・゚*゚・*・゚*゚・*・゚*゚・*・゚*゚・*


百田が転勤する前のことだ。


百田の資料作成を手伝って残業してたとき。

誰もいなくなって、終電まで逃す時間までかかってしまった。


薄暗い会社の中に、二人きり。


帰り支度をしながら、

『電車なくなっちゃった。タクシーだなぁ』って雑談してたら、


『じゃあさ、』

百田が急に意味深な真顔になって言ってきた。


『近くのホテルに一緒に泊まる?』

って。


ドキッとして、うろたえそうになったことは覚えてる。


冗談で言ってるんだと思った。

『や、やだな~、百田ったら、何言ってんの』


『…だよな~』


あはは~と笑い合った。


タクシーで帰った。


あの直後に、百田は転勤してしまった。
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