mariage~酒と肴、それから恋~《2》
百田はパタンとノートパソコンを閉じて、こっち見た。


「――え?」


「奢るし」


――いや、そうじゃなくて。


「腹減ってない?それとも義理立てする彼氏でもいんの?」


しつこいな。彼氏なんて何年もいねーよ。


「あたしのことよりも、そういう百田主任はどうなんですか?

確か大学のときから付き合ってた子いましたよね」


荷物をカバンに片付けながら聞いたら、百田はキョトンとした顔をした。


「…いつの話だよ」

呆れたような、困り顔。


「とっくに別れてるし。入社して一年くらいかな、毎日残業ばっかで、あんま会えなくてフラれた」

デスクの上を片付けながら百田は苦笑いした。


「あ、そうなんですか…?それは失礼致しました」


「仕事はもう終わってる。敬語やめようぜ。

なあ、佐藤、良い店知ってる?プライベートではまだ俺、浦島太郎状態なんだよね」

緩めていたネクタイを締め直した。


――彼女とは、別れてたんだ。


うそ、じゃあ、『泊まる?』って言ったときはもうフリーだったんだ…?


ひとりでに鼓動が早くなる。
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