沈黙の境界線
二ヶ月前のあの日
塾の帰り道だった。
住宅街の小道は人通りも少なくて
日照時間の短い冬の午後八時は深夜の暗闇と同じ。
等間隔に並ぶ街灯と建ち並ぶ家のカーテン越し?に窓を照らす灯り。
週に3日。塾のある日には決まって帰宅はこの時間になる。
遠目に自宅の屋根が見え隠れした頃、寒さもあって足取りが早くなる。
イヤホンから流れる音楽が溢れるように鳴り響いていて
私は自分のすぐ側にある危険に気づかないでいた。
自宅までの最後の街灯の下を通った瞬間
足元に影が重なった
振り返った瞬間瞳に焼き付いた街灯に鋭利に光る刃先が
無情にも私の右腕に突き刺さった。
一瞬の出来事だった。
腕に激しい痛みと重なるように視界にはいるナイフの柄。
左頬に激しい傷みが走ったのと叫び声をあげたのとどちらが先だったかは覚えていない。