ナイショの恋人は副社長!?
「さっき道場で君に言った言葉は真実(ほんとう)だよ。オレは気がつけば、君のことばかり考えていたんだ」
優子の暴れる心臓を知ってか知らずか、敦志は顔を近づけて囁くように言う。
突然の至近距離に動転する優子は、暗がりの中、敦志を見上げて口を開く。
「ふ、副社――」
敦志を呼ぶ小さな口に人差し指を添えられて、呼ぶことを阻止される。
たった指一本触れられているだけで、優子の心音はこの上なく速くなり、目を潤ませた。
「その呼び方をされると、すごく距離を感じるから」
夜風に静かに靡く敦志の髪を瞳に映すだけで、何も言えず、瞬きもできずにいた。
「ファーストネーム。呼び慣れているよね?」
ゆっくり口元に笑みを浮かべ、そっと触れていた人差し指を離す。
唇に指の余韻を感じながら、頬を染めて震える声を出した。
「あ、敦志……さん……」
恥ずかしい思いで言われた通りに名前を口にすると、敦志は満足げに口の端を上げて、優子の腰を引き寄せる。
鼻先が触れそうな距離で、敦志が囁いた。
「うん。随分近づいた。けど、もう少しだけ」
聞き終えた時には視界は遮られ、代わりに唇に温かく柔らかな感触がした。
目を閉じるのも忘れてしまうくらい突然の出来事で、優子は指一本動かせずに硬直していた。
そっと唇を離すと、敦志は優子の顔を両手で包み、もう一度見つめる。
そして、ふっと目を細め、優子の耳に唇を寄せた。
「Ich sehe nur dich…(君しかみえない)」
囁かれたのは甘い言葉。
ただでさえ耳元で言われたことでパニックになるのに、その内容に全身熱くさせられる。
優子は咄嗟に耳に手を添え、潤んだ目を敦志に向けた。
「道場でドイツ語だったのはヴォルフ氏に牽制する意味も込めていたけれど。君だけに伝えたい時にもいいかもしれないな」
そう言って敦志はメガネを外し、ニコッと笑い掛けて再び優子の顔に影を落とす。
「Ich liebe dich(愛してるよ)」
優子の暴れる心臓を知ってか知らずか、敦志は顔を近づけて囁くように言う。
突然の至近距離に動転する優子は、暗がりの中、敦志を見上げて口を開く。
「ふ、副社――」
敦志を呼ぶ小さな口に人差し指を添えられて、呼ぶことを阻止される。
たった指一本触れられているだけで、優子の心音はこの上なく速くなり、目を潤ませた。
「その呼び方をされると、すごく距離を感じるから」
夜風に静かに靡く敦志の髪を瞳に映すだけで、何も言えず、瞬きもできずにいた。
「ファーストネーム。呼び慣れているよね?」
ゆっくり口元に笑みを浮かべ、そっと触れていた人差し指を離す。
唇に指の余韻を感じながら、頬を染めて震える声を出した。
「あ、敦志……さん……」
恥ずかしい思いで言われた通りに名前を口にすると、敦志は満足げに口の端を上げて、優子の腰を引き寄せる。
鼻先が触れそうな距離で、敦志が囁いた。
「うん。随分近づいた。けど、もう少しだけ」
聞き終えた時には視界は遮られ、代わりに唇に温かく柔らかな感触がした。
目を閉じるのも忘れてしまうくらい突然の出来事で、優子は指一本動かせずに硬直していた。
そっと唇を離すと、敦志は優子の顔を両手で包み、もう一度見つめる。
そして、ふっと目を細め、優子の耳に唇を寄せた。
「Ich sehe nur dich…(君しかみえない)」
囁かれたのは甘い言葉。
ただでさえ耳元で言われたことでパニックになるのに、その内容に全身熱くさせられる。
優子は咄嗟に耳に手を添え、潤んだ目を敦志に向けた。
「道場でドイツ語だったのはヴォルフ氏に牽制する意味も込めていたけれど。君だけに伝えたい時にもいいかもしれないな」
そう言って敦志はメガネを外し、ニコッと笑い掛けて再び優子の顔に影を落とす。
「Ich liebe dich(愛してるよ)」