ナイショの恋人は副社長!?
敦志は瞬時に優子を支え、密着したままそう言った。
 
背後から腰に左手を回され、右手で手を握られる。
こめかみあたりに敦志の息づかいを感じ、優子はさらに身体を熱くさせた。

「それに、代金は不要ですよ。私が勝手にしたことだ」
 
耳の上で優しく聞こえる声にぞくりと身体を粟立たせ、激しく心臓が跳ね上がる。
優子は熱に加え、突然起きたハプニングに動揺し、足に力が入らない。
 
身体を支えている敦志は、そんな様子にすぐ気づくと、ひょいと優子を抱え上げた。 

グンと重力に逆らって掬い上げられた優子は、驚きのあまり、声も出せない。
頭の中が真っ白になって、ただ敦志を間近で見上げる。

「……少し、お邪魔します」
 
敦志はメガネを光らせ、優子を優しい目で見下ろすと、そう言って靴を脱いだ。
信じられない状況に、優子は未だに頭が働かず、されるがままだ。

そんな中、敦志の香りに包まれて、緊張と安らぎを感じていた。
 
優子の部屋を歩き進める途中、ようやく優子が声を出す。

「きっ、汚くて……部屋……すみません」
「昨日も思いましたけど、綺麗ですよ。あなたの人柄が現れている部屋ですね」
 
小声で言うと、敦志は口元に笑みを湛え、ちらりと優子を見て答えた。
その返答に、優子は目を大きくさせる。

「昨日も、って……やっぱり私、昨日は――」
 
酔っていて覚えていなかったが、もしかして帰り際にも何か敦志に迷惑をかけたかもしれないと思った。
けれど、まさかそれが一番最悪のパターンである、家の中まで送り届けてもらう羽目になっていたとは信じたくなかった。
 
その事実に自己嫌悪と焦燥感を抱える優子は、敦志の手によって、そっとベッドに降ろされる。
赤い顔で目を潤ませて敦志を仰ぎ見ると、敦志は困り顔で微笑を浮かべていた。
 
その表情の真意が読み取れない優子は、ハラハラとして見つめ続ける。

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