ナイショの恋人は副社長!?
「ヴォルフさんは、お誘いしなくてもいいのですか?」
背を向けたまま、チラリと僅かに顔を後ろのドリスに向けて敦志が尋ねる。
それを受けたドリスは、溜め息をひとつ吐いた。
「自由に動きたい人だから、いいの。食の好みも私とは違うし」
そう言って、上部の階数表示のランプが移り変わって行くのを眺め、腕を組みながら笑って話す。
「ちょっと変わってるの。我が兄ながら、面白いわ。ヴォルフは、強引な性格だし、我儘なところがあるの。そういう兄には、常に従ってくれるような従順な彼女がお似合いだと思うんだけど」
ドリスは何気なく話題にしているヴォルフのことだが、敦志にとっては今一番興味のあることだ。
ヴォルフという男は、どういう人物なのかという情報を仕入れたかったのだから。
どう自然に聞き出そうかと思っていたことを、ドリスの方から口を割ってくれるだなんてありがたい話だ。
敦志は、内心そんなふうに思いながらも、平静を装って耳を傾ける。
「ああ見えて、叱ってくれる女の子が好きなのよ。でも、怒らせると怖そうなイメージがあるから、そんな子なかなかいるはずがなくて」
一階について扉が開くと、ドリスが先にエレベーターを降りる。
後に続いて敦志が歩いていくと、ドリスはフロアの真ん中で足を止めて言った。
「だから……彼女(ユウコ)。見た目といい、中身とのギャップも、ヴォルフ好みかもね」
斜め後方から受付に立つ優子を眺めるドリスが、ぽつりと呟く。
(ギャップ……か。確かに、そうかもしれない)
目立たないように見えて、どこか存在感のある優子。
自分の意見を口にすることなく、ただ笑顔を絶やさずにいる人間かと思えば、突然凛々しい表情に変わり、正しいと思うことを述べる。
今日まで見た優子の色々な顔を思い出し、敦志は首を捻った。
(彼女があの時に泣いた理由は、果たして本当に、昨日聞いた理由だけだけなのか?)
予想外の強さを感じる優子に、昔からかわれた内容だけで涙することに違和感を抱く。
優子の話が嘘だったとは思わない敦志は、まだ何かがあるのではないかと疑い始めた。
焦点の合わない目でそんなことを考え、ドリスが立つ位置まで歩いて行くと、視界の隅に金髪の男――ヴォルフがいることに気づく。
背を向けたまま、チラリと僅かに顔を後ろのドリスに向けて敦志が尋ねる。
それを受けたドリスは、溜め息をひとつ吐いた。
「自由に動きたい人だから、いいの。食の好みも私とは違うし」
そう言って、上部の階数表示のランプが移り変わって行くのを眺め、腕を組みながら笑って話す。
「ちょっと変わってるの。我が兄ながら、面白いわ。ヴォルフは、強引な性格だし、我儘なところがあるの。そういう兄には、常に従ってくれるような従順な彼女がお似合いだと思うんだけど」
ドリスは何気なく話題にしているヴォルフのことだが、敦志にとっては今一番興味のあることだ。
ヴォルフという男は、どういう人物なのかという情報を仕入れたかったのだから。
どう自然に聞き出そうかと思っていたことを、ドリスの方から口を割ってくれるだなんてありがたい話だ。
敦志は、内心そんなふうに思いながらも、平静を装って耳を傾ける。
「ああ見えて、叱ってくれる女の子が好きなのよ。でも、怒らせると怖そうなイメージがあるから、そんな子なかなかいるはずがなくて」
一階について扉が開くと、ドリスが先にエレベーターを降りる。
後に続いて敦志が歩いていくと、ドリスはフロアの真ん中で足を止めて言った。
「だから……彼女(ユウコ)。見た目といい、中身とのギャップも、ヴォルフ好みかもね」
斜め後方から受付に立つ優子を眺めるドリスが、ぽつりと呟く。
(ギャップ……か。確かに、そうかもしれない)
目立たないように見えて、どこか存在感のある優子。
自分の意見を口にすることなく、ただ笑顔を絶やさずにいる人間かと思えば、突然凛々しい表情に変わり、正しいと思うことを述べる。
今日まで見た優子の色々な顔を思い出し、敦志は首を捻った。
(彼女があの時に泣いた理由は、果たして本当に、昨日聞いた理由だけだけなのか?)
予想外の強さを感じる優子に、昔からかわれた内容だけで涙することに違和感を抱く。
優子の話が嘘だったとは思わない敦志は、まだ何かがあるのではないかと疑い始めた。
焦点の合わない目でそんなことを考え、ドリスが立つ位置まで歩いて行くと、視界の隅に金髪の男――ヴォルフがいることに気づく。