ナイショの恋人は副社長!?
名刺を両手で周りから隠すように見ながら、更衣室へと向かう。
定時をとっくに過ぎた更衣室には、当然優子以外には誰もいない。
優子は、ロッカーも開けずに壁にもたれかかると、名刺を裏返してもう一度見た。
そこには、敦志の携帯番号が記されている。
信じられないことが、あの上着を借りた日から今でもまだ続いている。
優子は名刺から、自身の右手首を見つめ、そっと触れた。
(名前を呼ばれて、触れられて……)
思い出すとすぐに熱を帯びるその箇所に、顔を歪めて小さく笑いを零す。
「欲深くなっちゃう」
嫉妬する権利もないのに、ドリスや見たことのない敦志の彼女にも妬いてしまう。
(きっと、まだ話したこともないあの頃だったら、ここまでの感情になることはなかったはず)
知れば知る程……近づけば近づく程に、喜びよりも苦しさが増していく。
けれど、矛盾していることに、敦志を遠くから見ていただけの頃に戻りたいとは単純に思うことも出来なくて。
目を閉じ、スーッと息を吸い込むと、名刺を胸に当てる。
ゆっくりと瞼を開け、優子は携帯を取り出した。