◆Woman blues◆
私は信じられない思いで鮎川太一を見上げた。

「本気?」

そんな、わざわざ今からそれを聞く情熱が、あなたにあるの?

「夢輝さんさえよかったら、色々聞かせてください」

彼の瞳はどこまでも澄んでいて綺麗だった。

「じゃあ……お邪魔しようかな」

「はい!行きましょう、コンビニ!」

……っ!

茶色い大きな瞳が私を至近距離から優しく見下ろして、次の瞬間彼が私の手をギュッと握ったから、私は観念して笑った。

「……手を繋いで大丈夫?」

怪訝な顔で鮎川太一は私に首をかしげた。

「……あ、僕はいいですけど……ダメですか?」

「こんなオバサンと手なんて、」

それに私に恋人がいるの、気付いてるでしょ?

悪い事をしているような気になる。

だって歳の差七歳で、あなたはイケメンだし、私は……婚約中の彼に浮気されてて……。

惨めで情けなくなって、私は思わず彼の手を振りほどこうとした。

その時。

彼が一層私の手を握り締めた。

「オバサンじゃないです、お姉さんです。夢輝さん、飲み直しましょう!」

爽やかな、甘い笑顔。

なんか、全てがバカみたいに思えた。

秋人も、私も。

そう、全部が。

「うん!」

私は思いきり頷くと、鮎川太一の手をギュッと握った。
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