◆Woman blues◆
小さなテーブルを挟んで胡座をかいてこっちを見ている彼は凄く若くて、到底三十才には見えない。

「鮎川太一君」

「いつまでフルネームで呼ぶ気ですか。僕もう夢輝さんって呼んでますから、太一君って呼んでください」

「ダメ。太一」

「ブッ!急に呼び捨てっ」

太一は吹き出したけど、私はツンと横を向いた。

「弟みたいだから」

弟、いないけどな。

「この歳で姉ができるなんてラッキー」

そう言うと太一はフワリと笑った。

相変わらず茶色い大きな瞳で。

可愛いなあ。

それでもってカッコいい。

「で、続きですけど……初めて出逢った時、秋人って呼びながら泣いてたから」

途端にあの日の事が蘇り、私はギクリとした。

……彼は私にキスをしたはずだ。

どう思ってキスしたんだろう。

まあいい。

キスの一つや二つで騒ぎ立てるほどお互いに子供じゃない。

私は太一をジッと見つめて、彼の真意を図ろうとしたけど、温かい眼差しからは何も読み取れなかった。

「付き合って一年になるの」

私はポツポツと秋人との事を話し出した。
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