◆Woman blues◆
太一はまだ瞳に笑いを含んでいたけど叱られると思ったみたいで、俯いて私から顔を隠した。

「……ねえもしかして、キミからしたらこーゆーの大した事じゃないわけ?」

私にしたら婚約したのに心変わりされて、挙げ句にそれを隠されて宙ぶらりんのままほったらかされてるのって、きつい。

それって、大事件じゃない?

けど、目の前のイケメンは飄々としていて、たまに笑っていて。

あれ、私が変なの?

その時太一がうーんと腕を組んだ。

「僕がそっくりそのまま夢輝さんの立場だったら、悲しいです」

じゃあ、笑ってんじゃねえ。

太一は続けた。

「僕ならすぐに話し合います。ズルズルしたくないから」

そう言って口を閉じた太一は、真剣な眼差しで私を見ていて、不謹慎だけど私の心臓はドキンと跳ね上がった。

「足音、聞こえませんでした?」

「え?」

「さよならの足音です。こうなった時に聞こえたでしょう?夢輝さんはもう分かってる。なら、決着をつけるべきです」

心臓に氷を押し付けられた気分だった。

麻実にもそんな風な事を言われた。

居心地が悪くて、私は太一を見ていられなくなり、テーブルの上に視線を移す。

その時、フワリと頭に手が触れた。

驚いて見上げると、テーブル越しに手を伸ばした太一が、私の頭をヨシヨシといったように撫でた。
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