◆Woman blues◆
◆◆◆◆◆◆◆

三時間後。

「信じられない!!」

「俺も」

小さなテーブルを挟んですぐ目の前の隆太の顔を、私は穴の開くほど見つめた。

「俺も婚約まで進んだのに破局したお前が信じられねーわ」

「若い美人に盗られたわ」

「俺は金持ちのバカ息子に寝盗られたわ」

互いに早口でそう言うと、私達は顔を見合わせてフッと笑った。

それから二人とも黙ってビールをゴクゴクと飲む。

先に口を開いたのは隆太だった。

「半年もたなかったよ、実際は。俺は、佳菜子の愛情に答えてやれなかった」

隆太の奥さんは、とても焼きもちやきだった。

結婚してからの隆太は、飲みに誘っても断る日が増えて、たまに社内の飲み会に参加しても、ひっきりなしに奥さんから電話がかかってきていた。

ある日珍しく隆太が二人で飲みに行こうと誘ってくれたから、私は二つ返事でオッケイした。

企画部から上がってきたコンセプトを元に私がデザインしたジュエリーの製作を隆太が手掛け、売れ行きがよかったから二人でお祝いしたのだ。

その次の日、隆太は会社を休んだ。

後になって分かったことだが、奥さんと大喧嘩して彼女が手に怪我をしたらしい。

私は確信していた。

隆太は女性に手をあげるような人間じゃない。
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