◆Woman blues◆
「多分……俺、ずっと好きだったんだと思う、夢の事」

信じられない言葉が聞こえた。

それまで聞こえていたテレビの音声も、僅かに聞こえる電車の音も、すべてが消え失せた。

ただ感じるのは、逞しい隆太の腕と固い胸の感触。

やだ、どうしよう。

こんなの想像もしてなかった。

……好きだったって、隆太が私を?!

いつから?!

けど彼は離婚したてで……。

まるで考えがまとまらず、私は硬直したまま隆太に身を預けていた。

その時隆太が震える声で続けた。

「関係が悪化していくある日の夜、酔った佳菜子に言われたんだ。『あなたの中には、ずっと誰か私以外の誰かがいる』って」

嘘でしょ、まさか。

隆太は続けた。

「お前なんだと思う」

ドキンと一際鼓動が跳ねて、私は苦しくて思わず隆太から離れようとした。

なんで隆太がこんなことを言うのかまるで分からない。

「な、んで、隆太」

隆太が身を起こして私を真正面から見つめた。

「好きだと告げるには不確かだったのか、勇気がなかったのか、簡単な方を選んだのか……今となってはどれも間違いじゃない言い訳だと思う」

「隆太、意味わかんない」

隆太が私の瞳を覗き込んだ。

端正な頬が傾いていて、通った隆太の鼻筋が間近に見える。

「お前、いつか俺に言ったよな?本当はジュエリーデザイナーじゃなく、靴のデザインがしたいって」
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