◆Woman blues◆
ズンズンとオフィスに入り込んできた隆太が、私の真横まで来てニヤッと笑った。

「ええーっ?!」

怜奈ちゃんが仰け反りながら叫び、他の面々は硬直する。

「だから、俺が狙ってもいいんだよ」

首から上の血液が、沸騰したように熱く感じる。

私はどうしていいかわからず、隆太の背中をバシッと叩いた。

「バカッ!いいからもう行くわよ!」

「いってぇ!二人きりの時はめっちゃ可愛いのに」

「あんたバカじゃないの?!みんなが引いてるしっ」

私は焦って隆太を睨んだ。

けれど隆太は、その野性的な顔に不敵な笑みを浮かべていた。

そう、私など見ずに。

その視線の先に太一を見つけて、思わず私はギクリとし、息が止まりそうになった。

太一も唇を引き結んで、隆太を真っ直ぐに見つめている。

「別れたって……びっくりしましたよぉ!
でも、さっすが夢輝さん!
ほらほら、邪魔しない!みんな帰るよ」

南さんの言葉で皆が笑い声と共に立ち去り、後には私と隆太、それに太一が残った。

隆太は太一から視線をそらして私を見つめると、大きな手で私の頭をポンポンと叩いた。

「肉食いに行こうぜ」

私は太一が気になってならず、チラリと視線をあげた。

その時、太一が私を見た。

互いの視線が絡む。
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