紳士な婚約者の育てかた
「志真、何時も言っているようにしてください」
「はい」
銭湯では一番奥で着替える、体を見せないようにこっそりする。
最初は冗談かと思ったけれど知冬が真面目な顔をで言うので
志真も頷いてそれに従っている。
番台のお爺さんが男女どちらも覗けると知ってから彼は
そのお爺さんを敵視している。
私はむしろ知冬さんが見られてるんじゃないかと思う。
観光地でもない町の古い銭湯に外国の人って珍しいから。
コソコソと服を脱いで体をタオルで隠しお風呂に入る。
他にも人はいるけれど、家と違い広いお風呂は気分が違う。
「……」
1人ならぼんやりと湯船につかっていたい所だが相手がいる。
そこまで急ぐ必要はないけれど、髪を乾かしたりお肌の手入れを
しないといけないから時間は必要。
早めに切り上げて準備を終えて、銭湯から出ると既に知冬がいた。
「ごめんなさい、何時も待たせてしまって」
「そんなに急いで来なくてもいいのに。女性はしっかり体を暖めないと」
「でも」
「俺はそんなに時間はかからないし、志真を待っていたいだけなんで」
「……」
「何か?」
「ううん。帰りましょう」
お言葉に甘えて次回からはもう少しのんびりしていこうかな。
お風呂が修理されるのは良いことだけど、
この時間がなくなってしまうのは少しさみしいかもしれない。