紳士な婚約者の育てかた
もし、嫁姑戦争になっても知冬さんは極端に母親の肩を持つことはなさそう。
ただし、悩んでいる困っている私の顔を見てニヤニヤと喜びそうなので、
すぐには助けてくれないかもしれない。
山田家は祖母はまだ早いうちに亡くなり、母は嫁姑問題というものを体験していない。
アドバイスは期待できそうにないし、おばさんだって独身なので無理だし。
まだそうなると決まったわけではないけれど、相談相手が欲しい。
翌日は用事があるからと何時もとは逆に知冬に見送られて志真は仕事へ出る。
「あのね、山田さん。なんでも私に聞いたらポンポン答えられると思わないでください」
「すいません」
つい、新野先生なら答えてくれるかも?とお昼休みに保健室で話をしてみる。
全て詳しくではなくて、もしもの過程のお話として。いくら情報豊富でも
未婚で彼氏募集中の人に聞いてしまったのは失敗だった。顔が若干お怒り気味。
つり上がった目元がちょっと怖い。
「まあ、山田さんは恋愛と一緒でその辺の扱いも初心者でしょうから。
不安になって当然でしょう。分かりますよ、相談したいって不安な気持ち」
「さすが新野先生」
だが気を取り直し相談には乗ってくれるらしくてちょっと安心。
「まず男ってものは多かれ少なかれマザコンです」
「ま」
「女の前でカッコを付けて何をどう言っていてもママの前ではいい子になります」
「……ほ、ほんとに?」
「そして母親はどんなボンクラでも馬鹿でも息子は可愛いのです。取られたらムカつくのです」
「……」
「どんなに気をつけたって元からムカついている相手なんですから不満はでますよ。
その不満を全面に押し出すか、貴方のものになったのだと割りきってくれるか」
「やっぱり戦争ですか?」
「戦争です。表では笑顔で笑って、水面下では常に覇権を狙い戦いが続くのです」
「……」
「結婚とは戦いなのです」
どうしよう、辞めたいかもしれない。
「……」
「でも同居しないなら大丈夫でしょ。少しの我慢で」
「あ。そっか。同居しなければ」
同居、してるのかな。なんだかしてそうな気がする。
知冬さんの世話をするために。
「山田さん苦労してるのね。顔色が本当によくない」
「……せっかく良縁だと思ったのにな」
「そういうこともあるわ。でも、案外ドつきあってみたら仲良くなるかもよ」
「…はあ」
あのお義母さんにドツきなんかしたらやり返されて首を絞められそう。
「あとね、山田さん。理想の男との結婚を望むのなら。探しては駄目」
「え?」
「理想の男というものはね、育てるものなの。自分で理想を作るのよ」
「…理想を育てる」
「そう。相手を自分の好みにしてしまえば、自ずと理想の結婚になるわ」
「難しそうですね」
花でさえすぐ枯らしてしまう私が、知冬さんをどう理想に育てるのか。
ああ、恋って難しい。結婚って更に難しい。