紳士な婚約者の育てかた
そのご

山田志真。未だにパソコンが出来ません。

その前に所持もしてません。

父親が工業高校にいた事もあってパソコンは幼い頃から
家にあったにも関わらず。ちんぷんかんぷんです。


「志真?」
「もういい。もういいです目が痛い」

食後、知冬にノートパソコンを借りてあれこれ検索していた志真。
最初こそ楽しそうに見ていたのにだんだん表情が曇っていって。
最終的にはパソコンを閉じてそっぽを向いてしまう。
彼女の隣に座り本を読んでいた知冬は不思議そうにパソコン画面を見る。

「何を見てましたか?」
「別に怪しい物は…レシピとか。映画の情報とか。新しいパソコン情報とか」
「目がつかれた?」
「それもそうですけど、戻るボタンを押しても戻らなくなった」
「固まったかな」
「…私が使うといっつもそう。なんか変なことになっちゃう」

そしてすぐ父親にお願いして助けてもらう。
今の時代、自分のパソコンくらいはと何度も思っては挫折してきた。
でもこの先もし知冬と超遠距離となったらメールとかスカイプでやりとりを
したいからと実は購入を考え始めていたのだが。

やっぱり私には無理、頭が痛い。

ここはもう国際電話をかけるしかないか。

「パソコンが欲しいなら前に話をした友人に聞いてみますか」
「ああ、あの、日本の家電に詳しいっていうスペインの方」

おかげでこの家の足りなかった家電はもともと安いのに更に安くなったという。

「ええ、パソコンもかなり熟知している人で中古情報も豊富です」
「いくら良いパソコンを買えても私が機械音痴だから」
「そんな状態では今後志真と連絡を取るのは難しくなりそうですね」
「だから、パソコン教室行こうかなって」

駅前のフランス語講座は実は既に無料1日体験をしてきて
来週から本格的に受講するために通う事になっている。
でもこれはまだ内緒。こっそり習って話せるようになって、
志真には無理だと思って馬鹿にしている知冬をびっくりさせてやるのだから。

「最低限は俺が教えますよ。得意とまではいいませんけど、
普通には使えますから。志真が居ない時間が寂しい」
「じゃあ、お願いします」
「予算や希望などを予め聞いておきましょうか。それを彼に伝えます」
「…か、簡単なやつ」
「なるほど。分かりました」

ほら今だってちょっと笑って馬鹿にして。

ふてくされながらも気づいたらパソコン画面が直ったようで
ちゃんと動くのを確認したら志真はまた何やら検索を始める。
知冬はさり気なく志真に寄り添って一緒にその画面を眺めている。

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