紳士な婚約者の育てかた

気を取りなおし。

本当は検索したいことがいっぱいある。けど、知冬には知られたくない。
ので当り障りのないことを検索してみる。

例えば、彼の住んでいる南フランスの観光スポットとか。グルメとか。
ちょうど特集ページを発見し目をキラキラさせて見つめる志真。

「地中海かあ。実物はもっともっと素敵だろうなあぁ…」
「そうですね。とても良い場所だと思いますよ」
「知冬さんと一緒ならきっともっと楽しそう」

雨が殆ど無くて、ちょっと乾いた空気がより世界をクリアに見せて
何処までも陽気な太陽のもと、当たり前のように街中に芸術が存在していて
案内の写真を眺めているだけでも絵画の世界に飛び込んだような気分になる。

そんな異国の地を知冬と手を繋いで実際に歩けるなんて、

想像しただけでドキドキする。

住んでいる彼だからこそ知っているおすすめの場所もあるのだろうし。

置いて行かれるドキドキの可能性も未だに脳裏にこびりついているけど。

「俺も楽しみだな。志真を色々と案内したい」
「はい。期待してます」
「美味しいものを沢山食べてもらって」
「わあ」
「極上のワインを飲んでもらって」
「素敵…」
「そのまま俺に朝まで抱かれてもらうと」
「うんうん。……ん。え。ち、ちがっ」
「昼までがいい?」
「時間の問題じゃないです」

しかも伸びてるじゃないですか、時間。

我ながらよく泣かずに言えた。
未経験の女相手に無理言わないでください。
わかってるくせに。反応を見て笑ってる。

ほんと意地悪なんだから。

「でもフランスまで会いに来てくれるのなら、少しは期待してしまいますね」
「その前に。まずはちょっとずつ慣れるんです」
「そう。慣れてほしいな」

意味深な視線を向けないで、どうしたらいいか対処に困ります。

ああ、教えてください新野先生!助けて!

「あ、あ!シーフード美味しそう!いいなあ食べたいな。また大きなエビ食べたいな」
「地中海料理を出す店を検索しましょうか。母親は特に何でもいいそうなので」
「いいんですか?…よし。検索しよう」
「ワインが美味しいと母親は喜びますね、高級志向ではないので別にいいですけど」
「そっか。ワインか。…ワイン、全然知識がない」
「でしょうね」
「…い、いいですよ。自分で勉強するから」
「素直になればいいのに」

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