紳士な婚約者の育てかた
今朝も知冬に見送られて家を出た。でも今日は彼は学校お休み。
きっと大勢の生徒たちが落胆するのだろう、テオ先生が居ないと。
だけどいざ学校に入ったら先生の中にもがっかりしている人が居た。
「人気なんだな…知冬さん」
人気になる要素いっぱいもってるもんな。私と違って。
「今日は学校がいやに静かですなあ」
「そんなに静かですか?」
「やっぱりアイドル先生が居ないとねえ」
「……ですかね」
「来た所すぐで悪いんだがこれを事務局へ持ってってくれないか」
「はい。分かりました」
敢えて避けている所もあるけれど、顔を合わせることは殆ど無い
事務員と美術講師。お休みと思うと自分もちょっと寂しいかも。
家に帰ったら一緒の家に住んでいるのに、なんてワガママだ。
上司から書類を受け取るとその足で市役所内にある教育委員会へ向かう。
「シモーヌさん?そんな怖い人じゃないわよ」
「お母さんにはそうかもしれない」
「何怒ってるの?」
「怒ってない。不安なだけ」
そこで珍しく母と出くわした。
今年定年を迎えるのでその準備がどうとか、呼びだされてこうとか。
こっちだって授業とか忙しいのに面倒だとか。
説明されたはずなのに知冬の母親のことを知りたくてそれ所じゃない。
母親は英語を駆使して志真以上にきちんと話が通じていた。
義母(予定)の情報を得るのは今しかない。
「そんなピリピリしなくたっていいじゃない。御飯食べるだけでしょ?」
「でもそこで失敗したら今後に影響するよね?」
「するでしょうね。貴方の嫁としての資質が問われる食事会と言っていい」
「お母さんっ」
そんなプレッシャーかけて。意地悪。
「どうせ何言ってるかわかんないんだからいいじゃないほっときなさい」
「…そ、それもどうかな」
「知冬君がどうにかしてくれるでしょ。マザコンじゃなければいいわね」
「……」
「とにかく笑って笑ってやりすごす」
「姑との戦いを知らない人のアドバイスじゃなかったらな」
「何言ってんの。私は日々戦ってます」
「知ってます。……はあ、…笑顔か。笑顔笑顔」
「今度は家に招待しましょうか、好きなモノとか聞いておいて」
「……うん」