紳士な婚約者の育てかた

何時もと変わらない1日なのに、なんとなく長く感じたのは何故だろう。
テオ先生不在で周りがあまり活気がなかったのもあるかもしれないけど、
もしかしたら夜のことを考えて憂鬱だったからかも。

「難航どころか難破しそうな顔ね、山田さん」
「新野先生。…そうですね、そうかもしれないです」

放課後を迎えてもう帰る準備をしないといけないのに、
気がついたら保健室の前まで来ていた。
ドアを開けようとすると気配を察知していたのか先に先生が開けてくれた。

「最近よく保健室へ来るけど。そんなに辛い相手なの?」
「私が初心者すぎて」
「まあ、それは多分相手もわかってるでしょうけど」
「はい…」

知冬さんはわかってくれている。だから無理矢理には迫ってこない。
言葉ではちょっと意地悪くするけど、手を上げることも暴言を吐くこともない。
最近はちょっとえっちなことを言ってきて志真を翻弄するけれど。
それはキスだけで我慢させている自分も良くない。と思う。

「理想の彼氏に育てる前に、山田さんが成長しないとダメみたいね」
「どうしたら成長できます?」

どうしたらもっと相手と通じ合える?恥ずかしがらずに。

自信を持って。

「セックス」
「それ以外で」
「興味もない?全然?」
「そ、そういうのは結婚をしてからで」
「山田さんって何時代の人?旧石器時代?」
「わかってます。古い考えだって。でも、やっぱり…その」

全てを旦那さまに捧げるというのは大事かなと思ってたりして。

「それは結婚までの時間が短ければいいかもしれないけど、
そんなすぐには結婚しないんでしょう?」
「そう、ですね。まだそこまでは」
「もう子どもじゃないんだし、ここらで身も心も大人の女になる時じゃない?」
「……」
「決めるのは山田さんですけどね」
「そうですよね。私、ですよね」

何時も同じ場所でうだうだ考えてしまって全然進まない、成長しない。
自分がこんな人間なのだから、知冬を理想に育てるなんてできっこない。
もともと不器用だし、どうせ無理だって何処かで諦めてたし。

「相手のために変わりたいって思ってる?」
「思ってます。もっと、もっと…違う、もっとこう、明るい?元気な?対等な感じで」
「まったく芽が出てないわけじゃないんだ。頑張ってね」
「……え?え、ええ。頑張ります」

こんな私でも少しは希望があるってこと、ですか?

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