紳士な婚約者の育てかた
保健室から出ると知冬との約束の時間に近づいていて慌てる。
急いで荷物をカバンにつめて、軽い挨拶をして職員室を後にした。
時間が来たら待ち合わせ場所で知冬が待っていてくれてその車で
彼の母親が泊まるホテルへ向かう予定。
「どうしたそんな必死な顔で」
「必死なんです」
流石に校内を全力疾走は恥ずかしいので小走りで移動していたら
テニス部の部員たちとそれを引率する西田先生。
今は構っている暇はないと返事だけしてその場を後にする。
「志真」
「知冬さん。ごめんなさい遅れてっ」
「それは別に構わない。…そんな急いでこなくても、息が荒い」
流石に学校の駐車場は不味いだろうと少し離れた場所で待ち合わせ。
時計をみたら10分ほど遅れていて焦った。
もう既に知冬の車がとまっているし、彼も中にいるし、絶対怒られる。
息も絶え絶えに助手席にすべりこむとまずは謝って、それから呼吸。
「……はあ」
「大丈夫?」
「…なんとか」
お化粧なおしする時間まで相談に費やするなんて馬鹿すぎる。
小走りのせいで汗が額にじんわりでているし。
「母親は時間にルーズな人間なのでいいですよ、遅れたって」
「でも知冬さんは時間通りに待っていてくれたじゃないですか」
「俺は時間じゃなくて、志真を待っていたかっただけ」
「待たせてしまってごめんなさい」
「いいから。もう、…無理はしないでください」
「お義母さんは?」
「ホテルで休憩してますよ、時差ボケがひどいそうで」
「ああ」
志真の息が整った所で車が走り出す。昨日検索した結果、宿泊しているホテルの
最上階にあるレストランは様々な国の料理が並ぶバイキング形式で運良く
今月のメイン料理が地中海料理とのこと、街へでずともホテルでお食事となった。
「父親ですか?」
「四人でって言ってたし。奥様が来日したんだから来てるんですよね」
「いいえ。父親は明日、ホテルに来ます」
「どうして?」
せっかく奥様が来日したのだから1日でも早く会いたいんじゃないの?
「母親だけでも面倒なのにその上父親まで来たら鬱陶しい」
「知冬さん…」
「それに君をじっくりと見たいと母親に言われているので」
「…そ、そうなんだ」
「適当に俺が間に入って訳するので答えてあげてください」
「はい。頑張ります」
「いいですよ、適当で」
「そんな曖昧な返事したらお義母さんに悪い印象を」
「当の本人が一番曖昧です」