紳士な婚約者の育てかた

彼は大事なことを分かってない。

私は初めての経験になるのだから、本来はハネムーンで行うべきことを
今しようとしていたのだから。それ相応の甘い甘いときめくような素敵な
雰囲気でやらないと嫌なんだ。
何で母親の来訪に気をつけながらお客も来てるおばさんの家でとか。

「いいかもとは思ったけど…うう。やっぱり安易に言わないほうがいいよね」

せめてもっと別の場所がいいよね。

「テオサンご機嫌斜めね?」
「あれはその、拗ねてるだけです。ちょっと意見の相違があって」

庭に仕事道具を出してキャンバスに向かう知冬は確かにちょっと不機嫌そう。
彼からしたら朝も早くに起こされて朝ごはんも適当に終わってしまった上に
良い感じになってたのをキャンセルされて仕事しろと庭へ出されたわけだから。
何か機嫌を直すような事をしたいけれど。

頭に浮かんでくる、とても言葉では表せない行為。

出来るわけ無い!

「テオサンムズカシイからね。シマサン大変ね」
「そうですね。ちょっと」
「あのママさんとパパさんの子なのにねー?」
「ふふふ」
「シマサン、フランス来るの?」
「…何れは」
「楽しみね」
「…そう、ですね」

即答できないむず痒さ。だけど、
日本語が出来てこんなに明るい人がそばに居てくれるのは心強い。
ここはやっぱり知冬が言うようにとにかくためしてみるべきだろうか。
やってみて駄目ならとりあえず家に戻ればいい、し。

「不安?」
「…不安です。私は特に何が出来るわけでもないので」
「ああ、気にしない気にしない!私なんて何もデキナイけどママさん教えてくれたね」
「お義母さんが」
「私の家も地元もとても貧困してた。外働きに出たけど、辛かったね…」
「……」
「やれることはやるだけやる。やるだけならタダ」
「…マリアさん」
「それでヤリすぎて子どもが5人。余計貧困したね…困った」
「……」

勢いに任せるのは危ないということは分かった。


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