気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「大丈夫か?」

やるせない想いに唇を噛んでいたら、前を歩いている賀上さんがわたしに声をかけた。
店内の通路はの客の声が聞こえてくる程度の騒がしさで、すれ違うのはほとんど個室へ注文を運ぶ店員たち。

「あの場に居るのが苦しいような顔してただろ」

「えっと……」

通路の分かれ道で止まった賀上さんは、そのまま壁に凭れた。
あれ……煙草を買うんじゃないの?

「あの、賀上さん煙草は……」

「いらない。切らしてないから」

でも、切らしたから買うってさっきは言ってたはずだけれど。

賀上さんはわたしをちらっと見た。
含みのある視線を向けられて、もしかして賀上さんはわたしをあの場から連れ出すために適当な理由をつけたのかもしれないと思った。

そんなにわたし、苦しそうだったのかな。
顔に出ないようにしていたのに、情けない。

「吉葉と礼香が話しているのが気に入らないか?」

「な、なに言ってるんですか。そんなことないですよ」

「じゃあなんで、さっき吉葉と礼香を見てショックな顔をしてたんだ」

このままじゃその先の想いまで口に出されてしまいそうで、表情を変えない賀上さんの淡々とした瞳に、どうしようもなく焦った。
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