気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
そばまでやってきた賀上さんは、そう言ってわたしの手首を掴んだ。
急なことに驚いて、わたしは目をぱちぱちして掴まれたところを見る。

問い詰めてくる景さんから逃れることができるからいいけど……。ちらりと景さんを見ると、賀上さんにかなり険しい目を向けていた。

「ほら、行くぞ」

「えっ、あ、はい」

歩き出した賀上さんに手を引かれながら、わたしは景さんから離れる。
話が途中になってしまったから、景さんはさらに不機嫌になったかもしれない。

でも、今のわたしは景さんに関わらないようにして自分の気持ちを保つようにするしかないんだ――。


デスクに資料を取りにいってから賀上さんとミーティングルームに入ると、長テーブルの中央部分にふたりで向かい合って座った。

そう、ふたりだけ。だって、今日はわたしの広告デザインの件で打ち合わせなんて予定にはないのだから。
だから賀上さんがわたしに“打ち合わせするぞ”と言ったとき、心の底から『え?』だった。

「……一応、資料持ってきましたけど」

「悪いな。この後、別件で本当の打ち合わせが外であるから、ここに居られるのは三十分くらいしかない。でもせっかくだから、少し話し合うか。どうだ、デザインは」

わたしはファイルに挟まった資料をパラパラとめくった後、すぐに脇へ追いやった。
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