気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「……お前のこと面倒みてやる。だから、吉葉から離れることを考えておけ」

そう言ってわたしの肩を軽く触った賀上さんは、そのままオフィスへ戻っていった。

仕事の話をしていたはずなのに、景さんのそばから離れるように言った賀上さんの言葉には他に意味があるように思えてしまう。

そばに来いとか、泣かせたりしないとか、その言葉たちは仕事のことだった?

いやいや。仕事以外の意味ってなにがあるっていうのよ。
そばに来いっていうのはきっと仕事で頼れということで、泣かせたりしないというのは、景さんみたいに適当で軽々しくないと言いたかったんだよね。

そうだよね……?

なんだか混乱してしまう。
真っ直ぐ目を見て言われたからか、鼓動が落ち着かない。

胸に手を置きながら歩き出したとき、ふと、ミーティングルームのドアが少しだけ開いているのに気づいた。

あれ? さっきも開いていたかな。思い出せない、とりあえず閉めておこう。

わたしは近づいて、ドアノブを握ろうとしたときだった。

「っ……!?」

中からドアが開いて、強い力で手首を掴まれる。
そしてミーティングルームの中へと引っ張り込まれて、ドア脇の壁へ体を押しつけられた。
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