気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
「――なんだよ、今の話」

わたしを押さえつけたのは、景さんだった。
今の話を聞いていたらしい。ドアが閉まったと同時に、彼は低い声を出す。
すぐそばに彼の整った顔があって、胸の痛みと高鳴りが一緒にやってきた。

「賀上さんのところに行くの?」

目の前できつい表情をしている景さんに、息をするのを忘れそうになる。

どうして景さんがそんな顔をするのだろう。

「な、なんですか、いきなり。離してくださ……」

「聞いてるんだけど。俺から離れろって言われて、春ちゃんはどうするつもり?」

手首を掴む力が強くなった。それに顔を歪めても、景さんは二重の瞳でじっとわたしを見つめている。
いつもいたずらに笑って冗談ばかりなのに、どうして今は余裕のなさそうな顔をしているのか。

景さんは一体、わたしのことどう思ってるの?
仕事でわたしがアシスタントをしなくても別にどうもしないでしょう?

他にも人はいるのだから。

込み上げてくる景さんへの感情が苦しくて、切なくて、どうしようもない。

「……離れるって言ったら、景さんになにか不都合があるんですか? わたしがアシスタントにいてもいなくても、作業には関係ないですよね? 大体、景さんはいつもいつも、冗談なのか本気なのかわからないことばかりして困るんです。キスだってそうですよ……振り回されるわたしの気持ちも考えてください……!」
< 85 / 107 >

この作品をシェア

pagetop