気まぐれイケメン上司に振り回されてます!
わたしはなにも言えなくなってしまった。

一緒に仕事をしなくなれば苦しい気持ちが軽くなるかもしれないと、景さんから離れようとしている。
泣くほど好きなくせに、気持ちを伝えてフラれるのが怖いから言わないでいる。

「それに春絵はさ、吉葉さんが好きっていう気持ちだけで近くにいたわけじゃないよね?」

沙穂子の言葉に、埋もれていたわたしの気持ちが反応した。
たまに思い出す、働きはじめた頃の気持ち。それは今もずっと変わっていなくて。

適当ばかりな景さんだけど、自分も頑張ろうって思えることがいっぱいあったから彼のアシスタントは楽しかった。

気まぐれだけど優秀な景さんのそばでいろいろ学べたらいいなって、こっそり思っていた。

いつも口うるさく注意していたけれど、心の中ではすごいなって思っていたの。

わたしが見ている景さんのすべてが好き。

「沙穂子、わたし……」

「ほら、もう気持ちは決まったよね? 伝えてすっきりしなよ」

笑顔で肩を叩いてきた沙穂子に、わたしは小さくうなずいた。
そうだね。言わないと、すっきりしないよね。

「フラれたら、やけ酒に付き合ってくれる?」

「あったりまえでしょう、任せなさいよ! 朝まで付き合うわ!」

沙穂子の明るい言葉にて励まされたわたしは、放置していたジョッキを持って再び沙穂子と乾杯した。
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