密星-mitsuboshi-

「管理部とシステム部って
 何かあるんですか?」

三木と桃井のやり取りを聞き美加が首を傾げた

「あぁ、管理部が使ってる支払い請求
 用のソフトの管理は
 私と桃井さんが担当してるんだけど
 渡瀬課長に変わってから
 これじゃ使えないって言われて
 ソフトを大幅に改善することになっ
 ってね~
 それがまたこーしろあーしろって
 細かくて大変だったの」

堤そう言いながらワインをグラスに注いで美加と早紀の前に置いた

「いや~本当にすいません
 おかげで今じゃかなり効率も
 上がって、
 顧客管理がしやすくなりました」

三木は堤からの手からワインボトルを取ると、またニコニコ笑いながら堤のグラスに注いだ

「それにしても渡瀬課長はすごい人だな
 確かにあのソフトは使い勝手が悪い
 点があって何度も改善要望が上がって
 たんだけど
 開発には金がかかるから、
 なかなか改善稟議が通らなかっのに、
 それを通させたんだからスゴイわ」

桃井はそう言って真面目な顔で頷きながらタバコに火をつけた
 
「そうですよね~。
 堤も桃井さんもいくら改善させた
 くても今まで却下され続けてたのに
 やっぱ力のある人は違いますよね」

リゾットを取り分けていた北島も桃井の言葉を受けて同じように頷いた

「そうですよね。
 ソフトのシステム改善の予算会議時の
 渡瀬課長は、やはり凄かったです」

北島、桃井のグラスにワインを注いで席に戻った三木は、そう言って切れ長の目を見開いた

「あぁ!あれだろ?朝からほぼ1日
 使った会議だろ?
 うちの課長たちも同席したみたい
 だけどすごい勢いだったらしいな~
 データも資料も完璧、
 ケチのつけどころがなくて
 役員達も負けたーって感じだった
 って感心してたもんな~」

システム部内でその話は有名で
堤も北島も、もちろん三木も
桃井の話に、口々に渡瀬のことを評価した

それを聞きながら美加が顔を顔を早紀に寄せ小声でつぶやいた

「…渡瀬さんてやっぱり
 すごい人なんだね」

早紀は無言で頷いた

それから話はすぐに会社の噂話や、嫌な上司、武勇伝などと面白おかしく移っていった
そして次から次へと並べられる美味しい料理と出てくるワインは、皆のテンションを上げた

早紀は相づちを打ち、一緒に笑いながらも、頭の隅で渡瀬のことを考えていた
会議での話もそうだが
自分の関わらないところで称賛される渡瀬の話を聞くとやはりすごい人なのだと改めて思う
自慢したいほど嬉しく誇らしい気持ちになると同時に、そんな人と一緒にいたいと思ってもいいのかと少し怖くも感じていた

ふと時計を見ると21時をまわったところ
早紀は何気なくスマホの画面を開いてみると誰からの着信もメールも来ていない
そのことに少しだけ寂しさを感じた

「よしっ、いい時間だしそろそろ
 出ようか!
 それで!この後カラオケ行こう~!
 何かすっごい歌いたい気分!」

堤の一声で、そこそこ酔っ払った桃井が

「お~!!いいね~!
 行こう行こう~♪」

と隣の北島の肩に腕を回した

店を出ると、ひんやりした空気がお酒でほてった頬に気持ちが良かった

「美加さんはカラオケどうします?」

「そうね~
 間野ちゃんは?」

早紀としては管理部の三木がいる場からなるべく早く去りたいところ。
返事に躊躇していると

「美加さーん!
 一緒に行きましょう~よ~♪」
 
北島と肩を組んだ桃井が美加に大声で手を招きをしている

「はーい、今行きます♪」

美加は笑顔で手を振り返してから
横にいた早紀の耳元に顔を近づけ小声で言った

「間野ちゃんは帰ってもいいよ
 管理部の三木さんに
 変なボロが出ないうちに帰り
 たいんじゃない?」

早紀は驚いて美加の顔を見た

「実はずっとハラハラしてて…
 いいの?」

「うん、
 あとは私が付き合うし大丈夫♪」

美加はピースサインを作って笑った
そして今度は早紀がもっと小声で美加の耳元に寄った

「それからさっき、
 彼氏がいるか聞かれた時に
 とっさに答えてくれて
 ありがとう」

「あぁ、いーのよ気にしないで♪
 でも、当分の間はそのまま
 彼氏はいないことにしておきなね
 その方が無駄に詮索されないし
 決めておけば何を聞かれても
 慌てないから」

美加の言うことは最もだ
とっさの質問に不意を突かれ美加の機転に助けられた


「さーて!行こうかっ♪」

会計を終えて店から出てきた堤が、後ろから美加と早紀の肩に腕を回した

「堤さん、
 間野ちゃんちょっと飲みすぎちゃ
 ったみたいなので帰らせますね」

「そっかぁ~それは残念だね
 大丈夫?1人で帰れる?」

「はぃ大丈夫です
 この次は必ずついて行きますから!」

「うん!近いうちにまたご飯食べ
 ようね!」
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