密星-mitsuboshi-
電車が動き出すと、早紀は自己嫌悪の大きな溜息をついた
あろうことか渡瀬の部下である三木と食事をすることになってしまった
ハッキリと断ることができなかった自分が悪い
けれど、早紀の中で三木自身の印象は悪くなかった
管理部というだけで警戒してしまったが、話してみるととても感じが良かった
本人は名ばかりと言っていたが
渡瀬がチーム長を任せているくらいだから、信頼もあり仕事も出来るのだろう
早紀は気を取り直すことにした
(とりあえず渡瀬さんには、このことを話さないと…)
スマホを見るが今日は一度も渡瀬から連絡はない
里緒と一緒にいるからだろうか
わかっていたことだが
スマホが光るたびに期待してしまう自分に苦笑いした
翌朝、木賀駅のホームに降りると丁度目の前の階段を登っていく美加が見えた
早紀は人の間を縫って美加を追いかけ、
地上に出たところで隣に並んで歩速をあわせた
「美加さんおはよう!」
「間野ちゃん!おはよう!
ちょっと昨日は大丈夫だった?
管理部から遠ざけようとしたら
裏目に出ちゃって心配したよ」
「うん、それがね
ちょっと…」
「何?!」
「今度の水曜に三木さんと2人で
食事に行くことになっちゃって」
「えー?!
何でいきなりそんなことに
なってるのぉ?!」
思いの外大きく出たその声に、近くを歩く人の目がこちらに向いた
美加はハッとして口を押さえて愛想笑いを浮かべる
「昨日帰りに誘われて…」
「…誘われたって…
断りなさいよぉ!
管理部だよ?直属の部下だよ?
もし何かの拍子に彼とのことが
バレたら…」
「うん、分かってる
でもね、何て断ろうか返事に
困ってたら
すっごい残念そうな顔されて
それ見たら断われなくなって」
美加は手で顔を覆い溜息をついた
「あーなんで私も一緒に帰らなかっ
たんだろう…」
「ごめん。
でもこうなった以上何とかする
絶対ボロは出さないから安心
して?」
早紀に笑顔を向けられても、美加の心配そうな表情は変わらない
「…それはそうと!
カラオケは楽しかった?」
早紀はもう一度笑顔を向けた
「え、うん。大変だった。
みんな酔っ払っちゃって~
大騒ぎ
でも桃井さんが駅まで送って
くれた」
「優しいね~桃井さん」
「そうだね。
なんか桃井さんもうすぐ
主任に昇格するんだって」
「へ~!すご~い!
面白いし優しいし昇格するし!
付き合ったりしないの?」
「うーん
嫌いじゃないけどね~」
どこか歯切れの悪い美加に、早紀はかねてから思っていたことを聞いた
「…美加さん
誰か好きな人いるの?」
「えっ?!!
いやいや、いないよ!」
美加は両手をブンブン振った
「合コンとか行って良さそうな人い
ても全部断っちゃうじゃない?
想ってる人でもいるのかなって」
「そんなまさか~
まだ気が向かないだけよ」
「そお?
ね、何かあったら話してね?
美加さんが私の力になってくれる
ように
私も美加さんの力になりたいと
思ってるからね?」
「…うん。
ありがとう間野ちゃん。」
そう言って美加は嬉しそうに八重歯をのぞかせた
美加はここ数年彼氏はいない
容姿もいいので寄ってくる男性はいるが、美加に発展させる気がないのは早紀にもよくわかっていた
単に皆、美加の好みではなかったのかと思っていたが
最近、早紀自身が恋をしているからなのか、美加を見ていると
恋する女の子に見える時があった
それが桃井の影響じゃないとすると他に誰かいるのかも…
だが本人が否定している以上踏み込めない
隣を歩く美加の横顔を見ながら
いつか美加から話してくれることを待とうと早紀は思った
「それにしても三木さんとの
食事の件、
彼にはもう言ったの?」
「ううん。
昨日は連絡なかったし。
彼女がいたら困るから私からは
連絡しないの
向こうから連絡なかったって
ことは一緒にいたんだと思うし
今日にでも連絡きたら
話してみる」
「…まったくもー」
ため息をついた美加の目が、交差点に入ってきた一台の黒いタクシーを捉えた
早紀も美加の目線の先にあるタクシーに目をやった
タクシーは会社の近くに停車して、ドアが開くと
中から紺色のパンツスーツの篠山里緒が降りてきた
そしてグレーのスーツに黒のコートを手に持った渡瀬が続いた
付近にいた社員たちが2人を見るなり次々とあいさつをして頭を下げていった
あろうことか渡瀬の部下である三木と食事をすることになってしまった
ハッキリと断ることができなかった自分が悪い
けれど、早紀の中で三木自身の印象は悪くなかった
管理部というだけで警戒してしまったが、話してみるととても感じが良かった
本人は名ばかりと言っていたが
渡瀬がチーム長を任せているくらいだから、信頼もあり仕事も出来るのだろう
早紀は気を取り直すことにした
(とりあえず渡瀬さんには、このことを話さないと…)
スマホを見るが今日は一度も渡瀬から連絡はない
里緒と一緒にいるからだろうか
わかっていたことだが
スマホが光るたびに期待してしまう自分に苦笑いした
翌朝、木賀駅のホームに降りると丁度目の前の階段を登っていく美加が見えた
早紀は人の間を縫って美加を追いかけ、
地上に出たところで隣に並んで歩速をあわせた
「美加さんおはよう!」
「間野ちゃん!おはよう!
ちょっと昨日は大丈夫だった?
管理部から遠ざけようとしたら
裏目に出ちゃって心配したよ」
「うん、それがね
ちょっと…」
「何?!」
「今度の水曜に三木さんと2人で
食事に行くことになっちゃって」
「えー?!
何でいきなりそんなことに
なってるのぉ?!」
思いの外大きく出たその声に、近くを歩く人の目がこちらに向いた
美加はハッとして口を押さえて愛想笑いを浮かべる
「昨日帰りに誘われて…」
「…誘われたって…
断りなさいよぉ!
管理部だよ?直属の部下だよ?
もし何かの拍子に彼とのことが
バレたら…」
「うん、分かってる
でもね、何て断ろうか返事に
困ってたら
すっごい残念そうな顔されて
それ見たら断われなくなって」
美加は手で顔を覆い溜息をついた
「あーなんで私も一緒に帰らなかっ
たんだろう…」
「ごめん。
でもこうなった以上何とかする
絶対ボロは出さないから安心
して?」
早紀に笑顔を向けられても、美加の心配そうな表情は変わらない
「…それはそうと!
カラオケは楽しかった?」
早紀はもう一度笑顔を向けた
「え、うん。大変だった。
みんな酔っ払っちゃって~
大騒ぎ
でも桃井さんが駅まで送って
くれた」
「優しいね~桃井さん」
「そうだね。
なんか桃井さんもうすぐ
主任に昇格するんだって」
「へ~!すご~い!
面白いし優しいし昇格するし!
付き合ったりしないの?」
「うーん
嫌いじゃないけどね~」
どこか歯切れの悪い美加に、早紀はかねてから思っていたことを聞いた
「…美加さん
誰か好きな人いるの?」
「えっ?!!
いやいや、いないよ!」
美加は両手をブンブン振った
「合コンとか行って良さそうな人い
ても全部断っちゃうじゃない?
想ってる人でもいるのかなって」
「そんなまさか~
まだ気が向かないだけよ」
「そお?
ね、何かあったら話してね?
美加さんが私の力になってくれる
ように
私も美加さんの力になりたいと
思ってるからね?」
「…うん。
ありがとう間野ちゃん。」
そう言って美加は嬉しそうに八重歯をのぞかせた
美加はここ数年彼氏はいない
容姿もいいので寄ってくる男性はいるが、美加に発展させる気がないのは早紀にもよくわかっていた
単に皆、美加の好みではなかったのかと思っていたが
最近、早紀自身が恋をしているからなのか、美加を見ていると
恋する女の子に見える時があった
それが桃井の影響じゃないとすると他に誰かいるのかも…
だが本人が否定している以上踏み込めない
隣を歩く美加の横顔を見ながら
いつか美加から話してくれることを待とうと早紀は思った
「それにしても三木さんとの
食事の件、
彼にはもう言ったの?」
「ううん。
昨日は連絡なかったし。
彼女がいたら困るから私からは
連絡しないの
向こうから連絡なかったって
ことは一緒にいたんだと思うし
今日にでも連絡きたら
話してみる」
「…まったくもー」
ため息をついた美加の目が、交差点に入ってきた一台の黒いタクシーを捉えた
早紀も美加の目線の先にあるタクシーに目をやった
タクシーは会社の近くに停車して、ドアが開くと
中から紺色のパンツスーツの篠山里緒が降りてきた
そしてグレーのスーツに黒のコートを手に持った渡瀬が続いた
付近にいた社員たちが2人を見るなり次々とあいさつをして頭を下げていった